一般的に、ビカクシダを購入すると品種名が書かれた「タグ」や「ラベル」が付属している。
板と水苔の間や、ポットの縁に挿してあったりする「P.◯◯」とアルファベットが記載されている札状のモノの話。(以下、「タグ」と統一して記述する)
この「タグ」というのが、ビカクシダにおいて非常に大切な役割を果たしているので、今回は「ビカクシダのタグの読み方・書き方」について紹介する。
最後まで読めば、ビカクシダにとっての「タグ」は、廃棄したり、紛失してはいけないモノであることがわかるはず。
ビカクシダにとって「タグ」が重要な理由

一般的な観葉植物と違って、ビカクシダは小さなうちは品種の見分け方がとても難しい植物。
たとえば、メジャーな観葉植物の代表・パキラは流通するサイズなら、小さくてもパキラの格好をしている。
しかし、ビカクシダの場合は、胞子体や幼苗のポット苗の段階では、品種の特徴がまったく出ておらず「タグがないと何の品種かわからなくなる」という状態になってしまう。

こんな小さな株を見ても、何という品種か言い当てられる愛好家はいないだろうし、プロでも正確には判別できないだろう。
原種だけでなく、最近は交配や交雑、突然変異によって把握しきれない品種があるビカクシダは、その流通量やレア度、人気度によって価格も様々。
親株から直接採れた子株(OC株)なのか、胞子培養によってできた株なのか、あるいは組織培養によって作り出された株なのか…そうした由来によっても価値の見出され方も様々である。
また、同じ品種でもトップクラスの栽培家、SNSで人気の愛好家の親株や胞子培養に由来することで、プレミア感が出たりすることもあるため、品種名に加えて、生産者の名前やナーセリーのロゴなどが記載されている「タグ」が尊重される傾向がある。
こうしたことから、ビカクシダにとって「タグ」や「ラベル」が重要というわけ。
- 園芸タグが重要な理由
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- 小さな子株は品種の見分けが難しく、明確に株の品種を区別するため
- 株の由来(OC / 胞子培養 / 組織培養)がわかる
- 生産者が品質を証明するための意味がある
ビカクシダの「タグ」の読み方・書き方
ここからは、実際に「タグ」「ラベル」に記載されている内容の読み方、書き方を紹介する。
覚えておくと、育てている株から子株が採れたときや、胞子培養で増えた株など、ビカクシダの株の管理に役立つはず。
ビカクシダの「タグ」の冒頭に大文字で書かれている「P.」は、ビカクシダの学名(属名)「Platycerium(プラティケリウム)」の略称を意味している。
基本的なパターン「P. 原種名+園芸品種名」

ビカクシダの純粋な原種の場合は「P. 原種名」。これが一番シンプルな表記になる。
しかし、昨今は純粋な原種を見つけるのが難しく、ワイルド選抜個体や選抜個体、あるいは同一品種系統による交雑によってネームドされた品種の方が流通することの方が多い。
そうした株には「P. 原種名+園芸品種名」といった記載がされる。
上の画像の場合は「P. willickii Foythong」とあり、
原種のウィリンキー系統で、「Foythong(フォイソン)」という園芸品種名が付与されている個体のOC株(自然発生的に増殖した個体)であるというのが読み解ける。
ちなみに、「Foythong」はタイの国際的ビカクシダレジェンド・ILF Wannaさんセレクトのワイルド選抜個体である。
「P. 園芸品種名」:子株増殖 / OC株

「P. 品種名」のみ記載されている場合は、オリジナルの親株から自然発生した子株と判断できる。
親株から増殖した子株を株分けすることによって増殖されたOC株(オリジナルクローン株)であることを意味する。
つまり、世界のどこかを探せば、その個体の親株が存在することを意味している。
異なる原種同士の交雑、選抜個体同士の交雑などによって、前出の「P. 原種名+園芸品種名」といった定義に当てはまらない(あるいはルーツをタグに書ききれない)場合には、「P. 園芸品種名」とする向きがある。
あるいは、ビカクシダ愛好家の間で作出までの交雑の品種が知られている場合も原種名が省略されることがある。
たとえば、上記の「P. White Hawk(ホワイトホーク)」は、作出経緯が「P. willinckii(ウィリンキー)と P. diversifolium(ダイバーシフォリウム)の交配種(交雑種)」とされるのが知られているため、OC株であれば「P. White Hawk」として表記される。
後述する胞子培養株と明確に区別するために、「品種名(+OC)」「品種名(+PUP)」と記載されている場合もある。
存在する親株と同一のDNAを持つことから、親株の草姿がカタログ的に参考になり、価格も高めに流通する傾向があります。
また、リドレイやコロナリウムといった、基本的に胞子培養でしか増えない品種については、胞子培養株も品種名のみで表記されることがあります。
「P. 園芸品種名+sporeling」:胞子培養株

品種名の後に「spore」「spore grown」「sporeling」と記載されている場合は、胞子培養によって増殖された株を意味する。
”spore〜”の部分はいまいち統一されていないが、胞子培養株(=スポア株・同じDNAを持つ個体は存在しない)であることがわかる。
胞子培養で増えた株は、親株の特徴を受け継ぎながら独自の特徴を持つことも多く、多彩な個性の株を生み出すのが魅力。
いわば、胞子培養で増殖した株一つ一つが個別の個性を持つ新しい親株といえる。
圧倒的な個性を持った胞子培養株は将来的に新しい品種としてネーミングされることがある。
- 胞子培養株の微妙な記載の違いについて
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- 「P. ◯◯ spore」:株自体にはあまり使われない表記。「spore」は胞子自体を意味するニュアンスなので、胞子の販売などで「〇〇という品種の胞子」という意味で用いられることが多い。
- 「P. ◯◯ spore-grown」:株の大きさに関係なく「◯◯胞子培養由来の株」という意味。
- 「P. ◯◯ sporeling」:「〇〇の胞子から育った幼苗」というニュアンス。
品種名×品種名=交配品種

「品種名×品種名」「園芸品種名✕園芸品種名」が記載されている場合は、複数の品種を胞子培養で交配させた交配種(ハイブリッド種)を意味する。
これらは、うまく掛け合わせることができ、独自の特徴を持った株姿になれば新しい品種としてネーミングされることがある。
ひとつの園芸品種(cultiver)としてとしてネーミングされた場合は「P. peawchan (P. veitchii ‘Silver Frond’ × P. willinckii)」のように「P. 品種名 (○×△)」といったように後述でルーツを記載されることもある。
品種名+TC=組織培養株
品種名の後に(TC)が記載されている場合は、組織培養によって増殖されたメリクロン株を意味する。
つまり、人為的に組織培養された株であるという意味。
親株の一部の細胞を採取して人工的に増殖された株であるため、親株と同一のDNAを持つが、自然界では起こらない増え方なので、組織培養株の存在については賛否意見がある。
この区別が明確に表記されずに流通させる販売者もあるため、お迎えするビカクシダにストーリーを求める人には購入先の選定には注意が必要。
高価な希少品種や人気品種を、同一のDNAを保ったまま大量生産できる技術なので、OC株に比べると安価で入手することができるが、その考え方には様々な意見がある。
私が「タグ」「ラベル」に工夫していること

もちろん私も紹介してきた内容に基づいて、全ての株1つ1つにきちんとタグを用意している。
最近は、文字が消えないようにプラスチックの園芸タグにレーザー彫刻機で刻印するようにしたり、ラベルを印刷するようにして統一感を保っている。
こうしたひと手間もビカクシダのある暮らしの一コマとして楽しい。
屋内でLEDライトで栽培していても、植物育成ライトに含まれる紫外線で、油性マジックで書いた文字は見えなくなってしまうこともあるので、ときどき消えていないかチェックしておきたいところ。
手軽に「タグ」をマジックで書いておきたい場合は、園芸タグに書いても消えにくい「園芸用油性ペン」がおすすめ。
おわりに:「タグ」から、お手元のビカクシダのルーツがわかる

今回は「ビカクシダのタグの読み方・書き方」について紹介した。
株に付属するタグに記載されている内容を理解することで、メルカリやヤフオクなどでビカクシダを購入する際にも役立つので参考にしてみてほしい。
そして、あなたの株が誰かのところにお迎えいただく際には、このようにきちんと「株のルーツ」がわかるようにビカクシダのDNAを紡いでいただきたと思う。


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